+縄+想い 06

By 2014年7月1日8月 29th, 2014緊縛コラム

「足抜け」

私を売った家族のために身体を売りながらも、厳しいしきたりの世界で這いつくばっていることが、私の生きていく手段。今日も見ず知らずの人に愛想笑いをしては身を任せるだけ。何にも気持ちよくなくても身をよじりながらも悶えている素振りをしていれば、おそらく相変わらずの明日はやってくる。

この女郎屋敷に預けられてから、どれくらいの月日が経ったのだろう?何十人もの殿方の色相手をしていれば、恋をしたりするときもある。隠していた恋心が通じてしまった日の別れ際に「足抜け」の誘いがあった。「ここにいても何も変わらない日々・・・」そう思ったら、「行きます」の返事をしていたの。
意を決しての足抜け当日。枕事くらいの運動しかしない私には逃げる、走るなんてできるもんじゃない・・・。走っていたつもりが、あっけなく捕まってしまった。足抜けを企て、実行した女郎には、何が待っているんだろう?私は、捕まったかと思ったらスグサマ赤い腰巻だけを身に付けられ、楼主の前に引きずり出された。普段はニヤニヤしている楼主なのに、今日ばかりは鬼の面を付けているかのように見える。一歩ずつ近寄ってくる時の威圧感にもう負けてしまった。「今日、どれだけのお客を取っても私に勝ち目は無い」と逃げ場があるとしたら、あの世がいいって思える程だった。
楼主は私の身体を畳の上に力ずくで転がしては横にした。そして上に乗っては私の両腕を捻じり上げるかのように取り後ろ手に縛ってしまった。縛られ起こされても、前に進む気力なんてない。ただ楼主との距離を取りたくて、後ずさりをすることが全てだった。のに、私に「働け」と怒鳴ってくる。腰巻だけだから、胸は丸見えなのにこの楼主は私の身体には興味を持ってくれない。1対1でこんな格好の女が目の前にいるんだから、色事で事の重大さを見逃してくれても・・・なんて考えてみたけど、楼主なんて非情な人なんだろう。おそらく素晴らしい性器や秘事を備えた女には優しくて、私のような女郎なんて身分は鼻紙程度なんだろう・・・。いろんな事を考えても楼主から発する威圧感は私に絶望を与えてくる。働くことをしたくないから、逃げようとした。今さら、客と何をしろと言うのか分かりたくない。自分の身売りの立場が惨めなモノに感じて悔しさよりも境遇を恨んでみても、私は他の女郎達が客を待っている、あの嫌な部屋に連れて行かれてしまう・・・

妙な文書になってしまいましたが、これは昨年の緊縛桟敷会員様との集いにおける一幕の出来事なんです。前回の私の文で書きました、長池氏が集いに参加してくれて、寸劇の動画を撮ってみたんです。いつもなら、好きな時に写真を撮っていい会でしたが、この寸劇のときは、おそらく誰もシャッターを切っていなかったのではないでしょうか?長池氏の迫力に私だけでなく、参加してくれたみんなも圧倒されていたと感じられます。
台本もない動画撮影・・・始まってみれば、足抜けで失敗した女郎の悔しさ、虚しさが溢れて、恋をさせた相手を恨んでみたりもしました。身体を売れって言われたなら、とことん売っていればよかったのでは?と思ったり。実際はどんなお仕置きがあったかははっきりとは分からないけど、性的行為を受けた娘たちもいたはず。華やかな世界かもしれないけど、現世と同じで、心から笑えるなんてほんの一部なんだろうな。でも、私はそんな世界でいいから生きてみたかった。花魁まで昇らなくてもいい。男尊女卑が当たり前の世界で構わないから、お仕置きも受けても構わない、女郎屋敷に身を預けたい・・・。今でもそう想う。
今回は、画像ではなくて特別に動画を掲載してもらいました。この動画、このまま放置しておくのは勿体ないと思い、掲載の依頼をしました。長池氏の縄とこのようなシチュエーションはピッタリくると感じます。長池氏の縄に対する心や構え方等が、このような動画撮影に繋がったのだと思います。感謝しています。

美帆

※動画の本編は 杉浦則夫緊縛桟敷会員サイトで上映中です!会員の方はコチラで見れます→

6 コメント

  • kannon より:

    迫真の演技!動画は見られるけれど、残念ながら画面が小さくてよく分かりません。
    襲われて犯されようとしているシーンにも見えるので、赤い腰巻と美帆さんの声にそそられます。
    赤い腰巻が割られ、豊かな胸が露わになっていくのを想像してます。
    娼婦ものの短編小説ですね。続編をお願いします。

    • 美帆 より:

      kannonさん、いつも読んでいただき、ありがとうございます。
      この動画は即興です。演じるというよりも、二人とも本気モードでした。今では、分からないことですが、おそらく昔はこのような事が起こっていたのでしょうね。魂が過去の出来事に触れられるのは、すごく嬉しいことなんです。
      続編は、無しに等しいかとおもいます。これからも、よろしくです。

       美帆

  • ken より:

    動画観れました。
    ありがとうございます!

    • 美帆 より:

      kenさん、動画見られてよかったですね。私としては全編を一気にお見せしたかったです。分けてしまうと、熱が冷てからの続きは気持ちの面で・・・。見てくれて、ありがとうございます。
       美帆

  • キャリア35年 より:

    そうそうこの時は、お二方の凄まじいばかりの迫力に圧倒されて、写真を撮ることも忘れ、ただただ見つめ続けるのみだったことを思い出します。
    ほとんど打ち合わせもなく、急遽決定したとは思えぬほどで、お二方の繰り広げた世界にいともたやすく引き込まれてしまいました。

    • 美帆 より:

      キャリアさん、如何でしたか?生の寸劇でしたが・・・。長池氏のやりたいことが伝わったかと思います。私もあのようなシチュエーションは忘れられない縄になります。あのような縄の使い方が一番好きです。あの場の誰もが初めて見る縄だったかと思いますね。

      美帆

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